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 酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」

  1.  「皇室の名宝」
  2.  参考図書

 

 

酒井抱一「十二ケ月花鳥図」

「皇室の名宝」展示会

だいぶ前のことですが、「皇室の名宝」と銘打った展示会が東京国立博物館で開催されました。この時に宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の酒井抱一「十二ケ月花鳥図」を見る機会がありました。


その展示会には伊藤若冲「動稙綵絵」、狩野永徳「唐獅子図屏風」を筆頭に、丸山応挙、谷文晁、近代では横山大観などなど、目もくらむような絵画が多数展示されておりました。平日午後のやや遅い時間帯でしたので、あまり混雑はなく余裕をもって鑑賞することができました。


私は展示された掛け軸の鑑賞というものがあまり好きではありません。多くの展示会では有名な掛け軸はガラスケースの中におさめられていることが多く、ガラス越しに、それもやや遠方からの見学になりますね。また日光焼けしたようなセピア色の背景の掛け軸も多く、古くて貴重なものかもしれませんが、そこから「美」を感じ取ることが難しいような印象を持っておりました。


ところが、この「十二ケ月花鳥図」を見たとき、これまで何気なく通り過ぎた夥しい数の掛け軸からは感じたことがない(ごめんなさい)何とも形容しがたい気品が漂っていて、その場から動けなくなりました。ガラスケース越しの見学でしたが、額をガラスに押し付けながらしばらく見とれておりました。他の見学の方にはご迷惑をおかけしたことでしょう。


十二幅のどれもが素晴らしい...空間構成、図柄、配色....総てが、考えに考え抜かれている。スッキリしているのに、一分の隙もない....。初めて見た私がこれだけひきつけられるのですから、もちろん技術的にも秀でているのでしょうが、そんなことよりもセンスというか俗な言葉で恐縮ですが芸術性の問題ではないかと思います。酒井抱一の名は、その時に強く脳裏にインプットされました。また琳派というジャンルもさることながら、日本の美術の素晴らしさを再認識するとともに、三の丸尚蔵館のすごさを実感した見学会でした。

参考図書

東京国立博物館 宮内庁 NHK NHKプロモーション 編集 皇室の名宝 2009年10月6日

酒井抱一展開催実行委員会監修 酒井抱一と江戸琳派の全貌 株式会社求龍堂 2011年