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一位のシマフクロウ

クリスタル・カーヴィング

十六菊文と仙厳園

カップ・ソーサー、プレート

ジャスパーウェア

ペルシャ絨毯

一位のシマフクロウ

イチイ(一位)って御存知ですか。それではエンジュ(槐)はいかがでしょう。私は知りませんでした。両方とも木彫りに使われる木材の種類で、現在では比較的希少なもののようです。


先日久しぶりに北海道旅行に出かけました。バスで移動中に、トイレ休憩でとある道の駅に立ち寄りました。後で調べると「フォレスト276大滝」という名称の駅でした。売店を抜けて行くと地下へ降りる階段があり、地下の広間には自動演奏のピアノがあって、ピアノの音楽を聴きながら広間を横切ってトイレに行くようになっています。


短い休憩時間でしたが売店内を散策していると、その一画に木彫りをしている方がおられました。何気なく見学していると、手を止めて色々講釈してくださいました。材料は一位、槐、うもれぎ(埋れ木)、シナ材....。旅の記念になるかなと思って手ごろなものを物色(軽い気持ち)。埋れ木のフクロウなら手ごろなサイズと価格だし...でも時間もないし止めようか....。私がグズグズしていると、店主は一位で作ったシマフクロウを勧められました。


確かに手にしてみると重量感が違います(一位がはるかに重い)。「その昔高貴な人物が一位の木で笏(しゃく)を作った」とのエピソードを披露されたのが何となく心に響いたのでしょうか、ユックリ品定めをする間もなく勧められたものを購入することに(珍しく衝動買い)...。シマフクロウは慌ただしく発泡材に包んで手提げの紙袋へ入れられ、バスに揺られた後、そのまま飛行機に乗って当日自宅に輿入れとなりました。後日調べてみると、その昔シマフクロウは「村の守り神」として崇められていたと知りました。

木彫り(吉田信男 作)

185(H)x330(W)x85(D)mm

 

シンボリックな作風のシマフクロウで、見ていると何となく心が和みます。台座も含めて一塊の一位から彫りだされており、技巧を凝らした作品ではありませんが、デザイン的には面白いと思います。

クリスタル・カーヴィング

白幡 明作

デパートで作品展が開かれていました。たまたま近くを通りかかったら顔見知りの営業担当がおり、勧められるままに会場に入りました。実はクリスタルにはそれほど興味がなかったのですが、食わず嫌いもなんなので勉強のつもりで...。「クリスタル」という言葉からは水晶も思い浮かびますが、ガラス工芸に使われるものはクリスタルガラス (ガラスの主成分に酸化鉛を添加したもの) なのですね。鉛の含有率が高いほど透明度・屈折率・比重が高くなるようです。丁度作者もいらっしゃって、エネルギッシュに説明して下さいました。その話からは「良質なクリスタルと丹精込めた作業とが両輪の輪である」ことが十分理解できました。

 

担当者の熱意にグイグイ押されたこともあり、いつの間にか購入する方向へ (良くあるパターンです...)。超大物から小物まで展示されていますが、手ごろなロックグラスが目に留まりました。外側に面取りのような大きいカットと精巧な細かいカット(切子細工)が施されており、研磨も申し分ありません。こうしたカッティングは上から眺めたときに複雑な幾何学模様となって浮かび上がり、その造形美には驚かされます。カットのデザイン、カット技術、研磨などが総て満たされて初めてこうした作品が出来上がるのでしょうね。

 

具体的に何に使うかまで考えないまま、大事に自宅に持ち帰りました。ロックグラスの大きさですから、ウィスキーを注ぐと琥珀色が綺麗でしょうね...実家の父はウイスキーが好きでしたが...。当家では飲む人がおりませんので、キュリオケースに鎮座したまま使用される日を待っている状況です。ウーロン茶では可哀そうですし...。

十六菊文と仙厳園

復元島津薩摩切子 色被せガラス 切子猪口

(尚古集成館監修 薩摩ガラス工芸作)

 

遥か昔の学生時代の友人に会いに、鹿児島まで遠征してきました。飛行機で福岡経由、鹿児島空港へ。意外と短時間で到着...生まれて初めて鹿児島の地を踏みました。

 

桜島にフェリーで渡って鹿児島を沖合から眺めたあとは、古き良き時代の思い出話に花を咲かせました。帰りのお土産を友人に相談すると「薩摩切子」がよいということなので、車で製造販売所へ連れて行ってもらいました。そこは薩摩藩主島津光久が築庭した「仙厳園」の一画にあり、28代島津斉彬(なりあきら)が集成館事業を展開した場所でもあります。現在では薩摩切子の工場のほかに食堂も数軒ありました。まず眺めが素晴らしい食堂で薩摩名物をいただき、その後ユックリお土産選び...。

 

選んだものは赤と緑の猪口です。友人が同じものを持っているからという単純な理由でしたが、色といいカットといい、大変手の込んだ細工が施されている優品と思います。デザインは八角籠目に十六菊文を加えた伝統的なもののようです。幕末四賢侯に数えられる公武合体論者の斉彬が殖産興業の一環として推進したガラス工芸ですから、十六菊文をあしらったデザインの意味もおぼろげながら分かるような...。

 

ある時この猪口を色々な角度から眺めていて、何故こんなに仰々しく凹凸をつけ細工を施したのだろう、と沈思黙考しました。しばらく考えた後で、ぐい呑みの要領でしっかりホールドした時、ハッとしました。指に馴染んで、とても気持ちがいいのです。側面と下面の切子細工が手にピッタリ吸い付くようにできている...丁度利休形の楽茶碗のように...。見てくれだけではなく、とても機能的なのですね。勿論、綺麗な色を被せたガラスを細工している点も光ります。

 

このデザインを考えた人は、多分お酒が好きで好きでたまらない、なおかつデザイナーとしても極めて優秀な人(達)だったのでは...私は下戸ですので、全く見当違いの推測かもしれませんが...。自分好みの薩摩切子で美味しい焼酎をグイッと飲み干す、そんな作者の姿が目に浮かびました。

カップ・ソーサー、プレート

エルメス

シュヴァルドリアン  Cheval d'Orient

   
シルクロードの馬が主題のようです。カタログではティーカップ・ソーサーとなっていますが、私はコーヒーカップとして使用しています。

 

とにかくカップが持ちやすいのです。重からず軽からず、適度な太さの金色の取手が指にフィットして...Cheval d'Orientの絵も丹念に描かれていますよー。特にキリムのヘイベ(サドルバッグ)が美しい。ソーサーは、中央の受け皿の部分だけをやや盛り上げたフォルムにし、これを同心円状に多彩な色使いの幾何学模様が取り囲んでいます。

 

ソーサーだけ見るとややくどい感じもしますが、カップと合わせると調和が取れているのです。卓上版メリーゴーランドでしょうか。洋服のコーディネートと同様、フランス人の卓越した美的センスを感じます。繰り返しになりますが、入れるものは薄色の紅茶よりも濃い色のコーヒーが合うと思うのですが...

アメリカン・ディナープレイト

 

このプレートはステーキ皿として使用しております。

 

表の面は、ステーキを乗せたときに中央は白一色ですから、必然的に周辺の絵柄に目が行きます。そこにはエンジのバックに可愛いお花が整然と、密度濃く、細密に描かれています。同じ図案の6回リピートでしょうか。どこを見ても見事というほかはなく、ハンドペインティングとすると、気の遠くなるような手間暇かけた作業が想像されます。裏面にも控えめですが上品な意匠が施されておりますね。  

 

高度の技術、脈々と受け継がれる伝統、芸術への造詣...様々な思いが脳裏に去来して、思わず畏敬の念を抱かずにはおれません。参りました。

シエスタ  Siesta

 

「お昼休み」の名前からすると、日差しの強い南国でゆったりとランチをとるときに使用することを想定したものでしょうか。

 

色とりどりの植物と昆虫とが空間を最大限に利用して描かれており、開放的な気分にさせられます。私はティーカップに使用していますが、この色彩と紅茶の色とがぴったり合うのです。またカップを持ち上げたときに下に思いがけず絵が現れる、ゲストの意表を突く仕掛け、ウィット...見て楽しむことができるcup & saucerですね。

 

休日の午後、Siesta時に、このカップにピュタボン(ダージリン)を注ぎ、選び抜いた美味しいケーキをいただく...まことに至福のひと時です。

 

アメリカン・ディナープレイト

 

シュヴァルドリアンと同様に中央は余白を十分にとり、周囲に鑑賞ポイントを置く構成になっています。

 

花壇を連想させる枠組みの中に、色々なお花と蝶々や蜂など総て違った絵柄を、絶妙な配置・多彩な色で描いています。

 

全く同じ絵柄で、アーチ状の模様とバックの色を黄色から水色に変えたプレートもありますね。

モザイク ヴァンキャトル プラチナ プチカレ スクエア プレート 15x15cm

 

ケーキ皿として使用しています。エルメス発祥の地であるフォーブル・サントノーレ通り24(ヴァンキャトル)番地へのオマージュとしての命名で、小さいカレ(正方形)のスクエア(意味がダブってますね) プレートです。

 

デザインは「さすがエルメス」という感じで洗練されており、午後のティータイムには随分活躍しております。

マイセン

ホワイトローズ

 

マイセンらしい繊細なバラをあしらったカップ・ソーサーです。これはだいぶ前に購入していたのですが、好んで使用することはありませんでした。


 最近デパートのマイセンコーナーへ立ち寄った時に、「このソーサーは手で持ち、カップは指をかけないで、少し緊張して持ってください」と売り場の主と思しき女性から御指南いただきました。実を言うと、このカップは少し持ちにくいように感じていたのですが、言われたように扱うと案外すんなりと持てました。

 

ホワイトローズは丹念に描かれていて綺麗ですし、腰を絞った造形(ソーサーにも絞りが入っています)バラの枝を模したような取手や口縁の凝った作りなど、300年の歴史を十二分に感じとることができます...

ダリア

 

自宅には絵柄の違った4種類のマイセン製カップ・ソーサーがあります。ペインティングが見事で、とても写実性に優れていると感じます。

 

このダリアなどは、その最たるものですね。花びら11枚の表情が実に生き生きと描かれていて、西洋絵画の伝統を感じないわけにはいきません...

 

コバルトAカンテ

 

6組のティーカップ・ソーサー・プレートのトリオとして手にいれました(写真はカップ・ソーサーのみ)。カップの口縁やソーサー・プレートの縁にコバルトカラーの下地を付け、そこに金彩でAのような文様を入れているのが名前の由来のようです。

 

縁の起伏はマイセンに共通したものですね。カップとプレートは本体にも凹凸を入れて凝った形状にしています。絵付けは、ピンク・黄色・紫・青・橙色の濃淡で花を描き、葉や茎にも緑・黄土色など多色を使っています。これだけ多彩な花模様を上品に見せるには、余白を生かしたデザインが必要なのでしょうね。このデザインの源は柿右衛門様式なのでしょうね。400年の歳月を経た現在、日本の各窯とマイセンの評価はどうなのでしょう.....。

ヘレンド

右のピーチディッシュはアイスクリームや果物を入れてお出しすると中身が引き立ちます。取手付きの容器は上から見るとピーチを模したような形状に見えますね。中に可愛い絵柄のペインティングがみえますが、むしろ底のほうに凝った絵付けが施されています。プレートとセットで5組購入しました。
 

ヘレンドの製品はやさしい印象のものが多く、派手ではないぶん飽きがこないでしょうか。リーゾナブルなところも好感がもてます。

 

ロイヤルコペンハーゲン

ブルーフルーテッドハーフレース

 

これは朝食に毎日利用しているプレートです。使用頻度は高いのですが、染付ですからハードな使用にも耐えられるのですね。

 

中央の窓にはお花だけが、4分割された周囲にはお花・ツタ・装飾模様が同じ図柄で描かれています。

 

色としたは白地にブルーだけの簡素な世界ですし、絵柄も比較的単純ですが、器の表面に施された細かい模様が変化を与えていますので、思いのほか表情は豊かです。

 

我が家の朝食は温野菜、納豆、お魚など純日本風の献立が主体ですから、器が派手ではお料理が負けてしまいます。その点、このヨーロッパ産の器はでしゃばりすぎず、しかし気品は備えており、長年使用しても飽きのこない優品だと思います。

 

 

ジャスパーウェア

ジャスパーウェアは「ストーンウェア」とか「せっき」と呼ばれる陶器と磁器の中間的な性質を持つ焼物の一種で、施釉せずに地肌の風合いを賞玩するとの説明があります。

 

このレリーフはペールブルー(ウエッジウッド・ブルー)よりも濃い青色のバックに白い絵柄で古代ギリシャのモチーフが描かれており(15x30㎝)、黒いピアノ材(スプルースでしょうか)の木枠にはめ込まれています。

 

同じモチーフがウエッジウッド製品を収納する箱にも印刷されていることがありますので、ウエッジウッド社の代表的な絵柄なのでしょうね。比較的大きいレリーフなので、人物の表情や衣服のひだなど手の込んだ細かい彫りが良く分かります。上品で色彩的にもアクセントがあり、壁掛け用の装飾として十分満足しております。

ペルシャ絨毯

自宅の玄関は狭いのですが、ここに敷物があると随分雰囲気が良くなるナァーと前々から思っていました。そんな折、デパートの催物で絨毯展がありましたので、半分下見のつもりで早速出かけました。掘り出し物があればよいのですが...。

 

会場には沢山の敷物が所狭しと置かれています。今回は一切下調べなしで、販売員の方から基礎的なことも含めて教えて頂くつもりでした。時間帯のせいか、お客は多くはありません。あれこれ物色していると、売り場の責任者と思しき紳士が丁寧に説明して下さいました。

 

ターゲットは玄関マットと決めていましたからサイズ的にはほとんど迷う必要はありませんが、それにしても品質・価格は多種多様ですね...。その中から先の紳士は高品質の物を選りすぐって逐次紹介してくれました。

 

今回はペルシャ絨毯がメインでした。しかしペルシャと一口にいっても産地や工房によって実に多様な製品があるのですね。その中で2種類ほど強く勧められたものがありました。一つはバラの絵柄のもので、後でネットで調べると有名なクム産地ラジャビアン工房の物でした。気品があってさすがに綺麗です。

 

もう一つは同じくクム産地のハーキー工房のものでした。手にした時の肌触りがとっても柔らかく、色彩も明るくて、自宅にはこちらの方が好ましいように思われました。しかしラジャビアン工房にしてもハーキー工房にしても玄関マットにするには高価すぎる...(まったく予備知識なしで出かけたのが失敗でした)。

 

ペルシャ絨毯にはウールとシルクとがあり、シルクの方は高級感がありウールよりも高価ですが耐久性は劣ります。実用的にはウールということになります。手が込んでいるので製作にはとても時間がかかり、その分ウールといえども価格は高価になります。安い買い物ではありませんので、念入りに情報収集してからの方がよさそうですね。

 

 

ペルシャ絨毯(シルク)

 

 細かい花柄で、色彩もとっても綺麗です(写真では上手く写せません)。また見る方向によって色合いがガラリと変わります(陶器でいえばラスター彩でしょうか)。全体としてモダンな印象で、洋風の家屋によくマッチするように思います。

 

美術品のようなシルク製のペルシャ絨毯を玄関マットとして使うには抵抗があります。汚れた足で踏まれたらかわいそうですよね...。

 

実用品としてはウール製のものということになりますが、ウールといっても安価ではありません。何といってもペルシャ絨毯はブランド品ですからね。