マイ・フェイバリト

外箱 黒塗

内箱 蓋表「蓬莱青瓷茶盌 卯一(清水 朱印)」 

        (口径14.7cm・高さ6.6cm ・高台径4.0cm・重量286g)

 

清水卯一先生(1926-2004)は京都市東山区五条の出身で、1940年に石黒宗麿先生に師事、1941年に国立陶磁器試験所(京都)に入所、1943年京都市工業研究所窯業部助手、1945年終戦とともに職を辞して自宅陶房で作陶を開始、1970年滋賀県の比良山麓に転居して蓬莱窯を築かれました。そして1985年に人間国宝に認定されました。

 

清水先生は石黒宗麿先生と同様に、土・石・釉薬の収集と調合、ろくろ成型、釉掛け、焼成にいたるまで作陶に必要な総ての作業を自身で行うスタイルでした。蓬莱の地では自分に合う土や石を探し続け、また数えきれないほどの釉薬を開発されましたが、そのほとんどは地道な研究と試作の繰り返しにより得られたということです。

 

 この蓬莱青瓷茶盌は、下に引用した図録に紹介されている1985年作の蓬莱青瓷華花瓶と作風が良く似ており、同時期に制作されたものではないかと推測いたします。端正な朝顔形、口造りは端反りでシャープ、土見で片薄・巴の輪高台~高台脇には意匠を凝らしたヘラ削りと小さく鮮明な「卯」の印銘が見えます。

 

高台~腰の厚みに比べ口縁近くは一段薄造りになっており、重心が下にあるためか手持ちは少し重く感じます。見込みは大小様々な形の切り紙を重ねたような貫入紋様と、濃淡ある浅葱(あさぎ)色~やや黄色味がかった~口縁近くはほんのり赤みを帯びた、色調の微妙な変化が加わって、目を楽しませてくれます。ここに湯を注いだとき、驚いたことに、明るくて鮮烈なライトブルーに変化したのです。

 

 口造りが薄くて硬質なため、陶器のお茶碗とは口当たりが違いました。また、平素いただいている抹茶の味が違っているように感じました....よりストレートに感じるというか...。同じ抹茶なのに不思議なものですね。お茶碗によって味が変わるんだということを、この青瓷盌を通して初めて実感致しました。そして喫茶の歴史、青磁や天目の唐物茶碗から始まり、室町時代に高麗茶碗が見立てられ、桃山時代に和物茶碗が誕生したという史実に思いが至りました。

 

 

別冊炎芸術「青磁  清澄な青の至宝]」阿部出版株式会社  2017年12月15日初版第1刷発行

祥瑞写茶碗 二代宮川香山

 箱 蓋裏「香山造 祥瑞写茶碗(鵬雲斎 花押)」

   箱裏「呉祥瑞意 眞葛香山作(眞葛香山 朱印)」 

  (口径11.6cm・高さ7.9cm ・高台径7.0cm・重量415g)

 

腰から胴にかけて12列の立体的なねじりを入れた独特な造形のお茶碗です。この凹凸は形状に変化を与えているだけではなく、熱を伝わりにくくするという実用的は側面もあります。12列のねじった空間とその上部(口縁下)には呉須で、隙間なく丹念に、総て違った模様が手書きで描かれています。口紅を引いた口縁の見込み側にも模様が描かれ、丹精込めた仕事ぶりが伺えます。

 

”写し”とありますから、この魅惑的なお茶碗の原本はあるのでしょうね...あるなら是非一度実物を見てみたい...というのが第一印象でした。同様のお茶碗を作製していらっしゃる作家先生とお話しする機会がありましたが、原本がどこにあるのかご存知ありませんでした。また苦労して器を作り絵付けしたものが、最後に売り物になるのは40%程度だということでした。

 

 ねじりを入れるには厚みが必要ですから、重くなるのは致し方ないところでしょうね。それを差し引いても余りある独創性・珍しさがありますし、使い勝手も良いものですから、普段使いのお茶碗として大変重宝しております。

 

関 和男 著:「明治の釉下彩1 宮川香山釉下彩ー美術となった眞葛ー」

                株式会社創樹社美術出版 2018年8月15日発行

宮下玄覇 編者:「茶道実用手帳2019」株式会社宮帯出版社 2018年10月8日第1刷発行

共箱 蓋表 祥瑞寫湯呑

   蓋裏 九谷清々軒 永壽造 (永寿 朱印)

     (口径7.3cm・高さ8.5cm ・高台径4.8cm・重量171g)

 

初代矢口永寿(1870~1952)(号 清々軒)は1904年に山中町に永寿窯を築窯し、京都から永楽和全の門下生滝口加全らを招き京風の陶磁器を製作しました。1906年には清水六兵衛門人の外山寒山も招き、他にも能美や金沢から多数の工人を集め、染付工であった戸崎勘三郎は京都で修業し秀でた腕を持っていました。永寿自身は陶土に触れず筆を持たなかったといわれ、自分の好みを示して作品の質を向上させ、九谷焼の名工と称せられるに至りました。

 

この祥瑞写湯呑は胴の下2/3に16列の縦襞がある凝った作りで、そこに呉須で総て違う絵模様・山水画が細密に描かれ、上1/3には漢字と幾何学模様が見えます。口縁には約束通り口紅があり、見込みの上1/3にも総て違った景色の山水画が丁寧に描かれています。

 

 全体に絵付が丁寧で手の込んだ作品です。湯呑碗にこれだけ手間暇かけることは現代社会ではないでしょうね。実際に使用してみると、お茶を飲むときに見込みの鮮やかな景色が目に入って、楽しくお茶が頂けました。